Super Audio CD

Der Rosenkavalier

R. シュトラウス:楽劇「ばらの騎士」(全曲)

Der Rosenkavalier

メーカー希望小売価格 :  11,916円(税込)

Der Rosenkavalier

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特長

 

豊麗かつ優美に描き出されたウィーンの粋
黄昏の気配を濃厚に宿したカラヤン2度目の「ばらの騎士」が最高のリマスタリングで復活。

ESOTERICならではのこだわりのSuper Audio CDハイブリッド・ソフト

オリジナル・マスター・サウンドへの飽くことなきこだわりと、Super Audio CDハイブリッド化による圧倒的な音質向上で確固たる評価をいただいているESOTERIC名盤復刻シリーズ。発売以来LP時代を通じて決定的名盤と評価され、CD時代になった現代にいたるまで、カタログから消えたことのない名盤を高音質マスターからDSDマスタリングし、世界初のSuper Audio CDハイブリッド化を数多く実現してきました。晩年のカラヤンがザルツブルクでの上演と並行して生み出した名盤揃いのオペラの全曲盤の中から、1982~84年に録音されたR.シュトラウス「ばらの騎士」を、世界で初めてSuper Audio CDハイブリッドとして発売いたします。

新しいメディアに取り組み続けたカラヤン
Der Rosenkavalier

ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908~1989)は、レコード録音に対して終生変わらぬ情熱を持って取り組んだパイオニア的存在であり、残された録音もSP時代からデジタル録音まで、膨大な量にのぼります。常に最新鋭の技術革新に敏感だったカラヤンは、録音技術が進むたびに新たな録音方式で自分のレパートリーを録音し直したことでも知られ、特に1970年代後半からのデジタル録音技術、そしてその延長線上でフィリップスとソニーが開発したコンパクト・ディスクは、1981年4月、ザルツブルクで記者発表を行ってこの新しいメディアのプロモーションを買って出たほど積極的に支持し、その姿勢はCDというデジタル・メディアがLPに変わって普及していく上で大きな追い風となったのでした。

カラヤン晩年のデジタル録音の清華

カラヤンが初めてデジタル録音を行なったのは、1979年12月~80年4月のワーグナー「パルジファル」で、1980年1月~4月のモーツァルト「魔笛」がそれに続き(発売順は「魔笛」が先)、それ以降はほぼすべてがデジタル録音で行われるようになり、1989年に亡くなるまでの10年間でベートーヴェン、ブラームス、ドヴォルザーク、チャイコフスキーの交響曲など基本レパートリーの再録音のみならず、これまで演奏や録音のなかった新しい作品にも取り組み、カラヤンの最晩年の芸術の深まりを記録する膨大なディスコグラフィが形成されることになりました。オペラの全曲盤も9組が制作され、「魔笛」と「トゥーランドット」の2組を除いて、ザルツブルク音楽祭や復活祭音楽祭での実際のオペラ上演と並行して録音が制作されました。「ばらの騎士」もこの方式で収録され、1983年7月のザルツブルク音楽祭における新演出上演を見越して、前年の11月から録音が開始され、最終的に1984年1月に録音が完成し、同年夏のザルツブルク音楽祭に合わせて発売されたのでした。

カラヤンの「ばらの騎士」、「ばらの騎士」のカラヤン

「ばらの騎士」は、カラヤンにとって重要な意味合いを持つオペラでした。カラヤンにとって最初のポストであるウルム歌劇場時代に取り上げた馴染みのオペラの1曲であり(1932年3月)、戦後の1952年2月にはミラノ・スカラ座でも上演しています。しかし何といってもカラヤンと「ばらの騎士」とを強く結びつけたのは、1956年12月にイギリスのフィルハーモニア管弦楽団とEMIに録音した全曲盤と、1960年のザルツブルク音楽祭における上演(祝祭大劇場のこけら落とし公演)およびその舞台のパウル・ツィンナーによる映画化でした。当代一のマルシャリンと謳われたエリーザベト・シュヴァルツコップのほか、旬の名歌手をずらりと揃え、万全の態勢で制作されたEMIのLPと映画は、作品の魅力を世界的に普及させることに大いに貢献し、それと合わせて「ばらの騎士」といえばカラヤン、と作品と強く結び着いたイメージを広めたのでした。

オーケストラがオペラのストーリーを語るがごとき緻密な指揮ぶり

1983年のザルツブルクでの上演は、カラヤンにとってほぼ20年ぶりにこのオペラを指揮する機会であり、その間のカラヤンの円熟の深まりが、同時期に録音された今回のドイツ・グラモフォン盤にも色濃く反映しています。遅めのテンポの中であらゆる音符やモチーフ、歌唱が吟味尽くされ、シュトラウスが単純なメロディの下に埋め込んだ複雑な伴奏もないがしろにされず、ちょっとしたフレーズにも指揮者の意志が反映していることがよくわかります。いわばオーケストラの演奏を聴いているだけでも、オペラのストーリーや登場人物の感情の動きを鮮明に感じ取れるほどです。そして、このオペラを日常的に上演するウィーン国立歌劇場のオーケストラでもあるウィーン・フィルが、艶のあるサウンドでカラヤンの指揮に敏感に呼応し、作品に籠められたノスタルジーや黄昏の雰囲気を余すところなく再現しているのが大きなポイントです。

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ホーフマンスタールとシュトラウス

歌手も配慮の行き届いた適材適所のキャスティング
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アンナ・トモワ・シントウ

歌手陣は、カラヤンが当時オペラや声楽曲の上演で好んで共演し、お互いに音楽的に相通じていた、美声と表現力とを兼ね備えた旬の歌手が起用されています。アンナ・トモワ・シントウは、シュヴァルツコップのイメージの延長線上に新たなマルシャリン像を創造し、クルト・モルは幅広いヴォーカル・レンジを要求される極め付きの難役オックスを鮮やかに演じ切っています。アグネス・バルツァは、得意のカルメンを思わせる血気盛んなオクタヴィアンを聴かせ、いわば理想的なイメージのオクタヴィアンとなっています。ファニナルのゴットフリート・ホーニック、ゾフィーのジャネット・ペリー、ヴァルツァッキのハインツ・ツェドニクなども適材適所で、それぞれの役柄のキャクターを鮮明に体現しています。ドミンゴ、パヴァロッティ、カレーラスなど録音ではカメオ的な有名歌手が起用される傾向のあったテノール歌手役に、本来の役柄にふさわしいリリックな声質を持つヴィンソン・コールがキャスティングされているのもカラヤンならではの慧眼といえるでしょう。またマリアンネ役には往年の名コロラトゥーラ・ソプラノ、ヴィルマ・リップ(カラヤンの1950年の「魔笛」録音での夜の女王役)、侯爵家の執事役には名エヴァンゲリストでもあったクルト・エクヴィルツが起用されるなど、細部まで拘った配慮の上で歌手のキャスティングがなされているのもこの録音の特徴といえましょう。

最高の状態でのSuper Audio CDハイブリッド化が実現

録音はウィーンのムジークフェラインザールで、約1年2か月の間に、4回の連続するセッションで行われました。響きが多いため必ずしも録音向きではないとされるムジークフェラインザールですが、1970年代初頭以来ウィーン・フィルを中心にこのホールで録音を重ねてきたドイツ・グラモフォンのノウハウがきっちりと蓄積されており、言葉が命であるシュトラウスのオペラであることを重視して、名歌手の美声にきっちりとフォーカスをあててディクションを明晰に収録しつつ、歌手陣を包み込むように周囲に広がるオーケストラの豊麗な響きを、幅広いダイナミック・レンジで捉えています。オーボエやクラリネット、ホルンをはじめとするウィーン・フィルの特徴的な木管・金管のソロもきっちりとそれらの美観を損なわずに再現され、艶のある弦楽器群も繊細なソロから厚みのあるトゥッティまでを余すところなく堪能することができます。第2幕のオクタヴィアンが到着するまでの舞台裏の合唱(DISC2、トラック[3])、第3幕の料理屋の別室のバンド演奏(DISC2、トラック[3])などシュトラウスが舞台裏からの演奏と指定した遠近感には配慮されているものの、デッカのソニック・ステージのように舞台上の登場人物の動きをいちいち音で表現することよりも、シュトラウスの書いた音楽の響きの魅力を余すところなくステレオの音場の中で再現することに焦点が置かれています。デジタル録音の初期で、LP発売がCDに先行していた最後の時期の録音であるため、本格的なリマスタリングが行われるのは、今回が初めてとなります。今回のSuper Audio CD ハイブリッド化に当たっては、これまで同様、使用するマスターテープの選定から、最終的なDSDマスタリングの行程に至るまで、妥協を排した作業が行われています。特にDSDマスタリングにあたっては、DAコンバーターとルビジウムクロックジェネレーターに、入念に調整されたESOTERICの最高級機材を投入、またMEXCELケーブルを惜しげもなく使用することで、オリジナル・マスターの持つ情報を余すところなくディスク化することができました。

「『ばらの騎士』を聴くためのベスト・ディスクというだけでなく
カラヤンを聴くためのベスト・ディスク」
「カラヤンはおびただしい数の演奏をレコードやコンパクト・ディスクに残している。それらのなかでも、この『ばらの騎士』は、おそらく5本の指に入る。指揮者としてはカラヤンの技巧、あるいはその音楽的嗜好、それらがここでは渾然一体となって示されている。『ばらの騎士』を聴くためのベスト・ディスクというだけでなく、カラヤンを聴くためのベスト・ディスクと考えるのは、そのためである。カラヤンが満を持したディスクならではの完成度の高さを誇る演奏である。」
『クラシック・レコード・ブック1000 VOL.6オペラ&声楽曲編』1986年
 
「かつて一般的なオペラとしての演奏を行なったカラヤンは、ここで配慮も何も捨て、自分自身の『ばらの騎士』の美を実現させている。元帥夫人の悩みも、オクタヴィアンの迷いも、ここではただの素材に過ぎない。何もかもが、ウィーン・フィルの艶麗を極める響きの中に溶け込み、『ばらの騎士』という声と管弦楽の魔法の世界が現れる。これがオペラか?そんなことはどうだっていい。これはカラヤンの『ばらの騎士』というべきもので、他に類を見ない。一つの音楽世界なのである。」
『ONTOMO MOOK クラシック名盤大全オペラ・声楽曲編』1998年
 
「この演奏の大きな魅力は、オケがウィーン・フィルであることだろう。最円熟期のカラヤンが精妙な陰翳に富んだ表現によって、そのゆたかに洗練された美しい響きとしなやかな表現力を徹底的に磨き上げ、溜め息の出るほど美しく豊麗な世界を作っている。しかもそこに、晩年のカラヤンならではの諦観ともいうべき雰囲気が漂っており、それが演奏に一層深い味わいと余韻を醸して、古き佳き時代のウィーンを舞台にしたこのオペラを一層魅力的なものにしている。歌手陣も旧盤に劣らず充実している。」
『クラシック不滅の名盤800』1997年
 
「カラヤンとウィーン・フィルという楽劇『ばらの騎士』にとって理想的かつ最高のコンビが残した極め付きの録音。カラヤンのオペラ録音の中でもとりわけ完成度の高い録音として名高い。ウィーン・フィルから馥郁たる響きを引き出していて、世紀末の退廃的なムードをも感じさせ、香り漂う魅惑的な音楽を存分に味わうことができる。トモワ=シントウはマルシャリンの微妙に揺れる思いや細かな感情を丁寧に歌いこんでおり、新たな元帥夫人像を作り上げて素晴らしい。」
『最新版・クラシック不滅の名盤1000』2018年