電流駆動 - パーフェクトなコントロールを目指して

電流駆動
- パーフェクトなコントロールを目指して

iTRONはAvantgardeの革新的な電子回路で、ドライバーのダイヤフラムを高い次元でコントロールし、
驚くほど緻密で純粋な、透明感のある音を実現しました。従来のアンプとの差は非常に大きく、
私たちはこれをゲームチェンジャー・テクノロジーと呼んでいます。

iTRONは、電流変換回路の原理を応用しています。Avantgardeの特許開発は、理想的な
電圧-電流変換器がダイナミック型スピーカーに最適なドライバーであるという概念に基づいています。
革新的で説得力があり、そして何より電気物理学的に正しい手法です。iTRONはアンプではなく、
「非常に洗練されたドライバーエンジン」なのです。
この論理を理解するために、電気物理学の基本を少しばかり解説しておきましょう。

スピーカーの仕組み

スピーカーの仕組み

スピーカーは、電気エネルギーを音響信号(音)に変換するものです。 機能原理は、磁界中に吊るされた
コイルに電流が流れるというもので、ダイヤフラムの加速度は電流の大きさによって生じるものであり、
電圧の大きさによって生じるものではないことがまず基本のポイントです。

アンプの仕組み

アンプの仕組み

しかし、逆説的ではありますが、市販のオーディオアンプはほとんど電圧アンプの原理で動作しています。
つまり、音楽信号の変化やレベルの増減に合わせて増幅された電圧がスピーカーに供給されるのです。
厳密に言うと、音楽再生のためにボイスコイルに供給すべきなのは本来、電圧ではなく、電流なのです。
このように、最適とはいえないシステムであるにもかかわらず、機能するのは、
電圧、電流、抵抗の電気物理学的な関係に依るためです。

オームの法則

オームの法則

オームの法則とは、「物体を流れる電流の強さは、抵抗値が一定の場合、電圧に比例する」というものです。
つまり、インピーダンスが一定(例えば8Ω)のスピーカーのボイスコイルで電圧が上昇すると、
電流の流れもそれに比例して増加し、ダイヤフラムは入力信号に追従して直線的に加速されます。

逆に、オームの法則では、同じ電圧であれば、流れる電流は抵抗に依存し、
抵抗が大きいと電流の流れは小さくなり、逆に抵抗が小さいと電流は大きくなります。
下の水槽の図は、これらの関係を図説したものです。

インピーダンスが常に変化する現実のスピーカーの場合、これはダイヤフラムの加速度が
入力信号に対してリニアでなくなり、大きな歪みをもたらすことになります。

したがって、どのようなスピーカーであっても、その実際の
インピーダンス特性を理解することは非常に重要なのです。

 

 

Impedance


Impedance

アンプ設計における最大の間違いの原因

アンプ設計における最大の間違いの原因

ダイナミック型スピーカーは複雑な電気物理システムで、その抵抗、すなわちインピーダンスは
多くの要因に影響されます。インピーダンスは制御が難しく、ドライブ中に常に変化しています。

周波数依存のインピーダンスカーブ

周波数依存のインピーダンスカーブ

どのドライバーもインピーダンスカーブは様々ですが、その共振周波数のあたりで最も値が高くなります。
電圧アンプはこのインピーダンスの変化に影響されるため、特定の周波数帯において音量レベルが
大きくなったり、音がソフトになったりして、音楽信号を歪ませてしまいます。

マルチウェイスピーカーのインピーダンスカーブ

ツイーターのインピーダンスカーブ

ボイスコイルの誘導性リアクタンス

ボイスコイルの誘導性リアクタンス

ボイスコイルの誘導性リアクタンスにより、高域ではインピーダンスが高くなり、
電圧アンプでは、特にツイーターのように高域でレベルダウンを引き起こします。

ポジション依存インダクタンス

ポジション依存インダクタンス

ボイスコイルのインダクタンス(誘電)は、ポールコアからの距離によって変化します。
ボイスコイルの前後の動きにより、この距離が変化することで電気的なインダクタンスが
自動的に変化します。電圧アンプではドライバーのストロークの程度によって最大20%の
連続的な歪みが発生。そのため、音楽のインパルス波形が歪んでしまいます。

逆起電力

逆起電力

ボイスコイルに電流が流れて振幅し、元に戻る際に負の電圧が発生し、
それがスピーカーケーブルにフィードバックされます。このいわゆる逆起電力は、
電圧アンプが音楽信号を正確に再生するために必要とされる電圧、すなわち入力電圧を
低下させることとなり、音楽のインパルスを弱め、ダイナミックレンジを圧縮してしまいます。

熱圧縮

熱圧縮

スピーカーを鳴らしていると、電流を流すボイスコイルは発熱し、場合によっては
かなりの熱を持ちます。この熱により内部抵抗が増加し、最大負荷時にはドライバーのインピーダンスが
最大40%上昇することがあります。これも音楽信号を圧縮し、ダイナミズムが失われる結果につながります。

加速された質量の慣性

加速された質量の慣性

物理学では、慣性とは動いている物体がその運動状態に留まろうとする傾向のことです。
スピーカーとの関係では、ニュートンの第1の法則により、加速されたダイヤフラムは
音楽信号とは無関係に、その運動方向を維持しようとします。音楽信号を直接打ち消す
この力の大きさは、ドライバーの移動質量とダイヤフラムの移動速度に依存し、
可動質量が大きいスピーカーは、大音量時においてかなりリニアリティーが失われます。

 

 

Voice Coil


Voice Coil

電流アンプの前に立ちはだかる課題

電流アンプの前に立ちはだかる課題

詳しく説明したとおり、スピーカーは非常に複雑な負荷を持つ装置であり、
少なくとも電圧アンプでは歪なしで動作させることは不可能なのです。
しかし、事実上、ほぼすべてのオーディオアンプはこの原理に基づいています。
ではなぜ電圧アンプばかりで、電流アンプがほとんど市場にないのでしょうか?
その理由は、電流アンプ方式と従来のパッシブ型スピーカーキャビネットの
基本的な相性の悪さと、電流アンプの技術が非常に複雑であることに起因しています。

電流アンプの限界

電流アンプの限界

電流アンプは、ドライブユニットの共振周波数-つまり、スピーカーが最大音量で、
かつインピーダンスが最大となる帯域においては、制御ができません。
電流アンプはこのピークを補うためにより多くのエネルギーをこの帯域に送り込み、
アンプ回路はオーバーロードとなり、スピーカーはこの帯域にブーミングが発生してしまうでしょう。

さらに複雑なのは、パッシブクロスオーバーでは電流アンプの原理が働かないことです。
ボイスコイルに流れる電流を正確に制御するのではなく、電流の一部が
パッシブクロスオーバーを通過し、溢れるように流れてしまうのです。

そのため、電流アンプ方式はドライバーの共振周波数帯域では使用できず、
パッシブスピーカーには使用できないのです。
実際、すべてのスピーカーはこの原理に基づいており、電圧アンプしか使用できないのです。

アヴァンギャルドな方法

アヴァンギャルドな方法

しかし、私たちはiTRON電流アンプ方式の明確な優位性を確信しており、
それを活かすためのシステム構成を開発しました。個々のドライバーユニットが
専用のiTRONエレクトロニクスを持つフル・アクティブ・システムとすることで、
各ドライバーがそれぞれの共振周波数の範囲外で確実に動作し、
信号経路にパッシブクロスオーバーを含まない設計です。

 

 

Voice Coil


The biggest challenge

iTRON - 最大の技術的チャレンジ
極めてピュアな電圧/電流コンバーター

iTRON - 最大の技術的チャレンジ
極めてピュアな電圧/電流コンバーター

iTRONは私たちが真正面から取り組んできた過去最大の技術的チャレンジです。
理論はあくまでも理論。どう実現するかが真の課題です。
あらゆる技術革新がそうであるように、広範な基礎研究が必要となりました。

私たちは様々な試作回路を作っては様々な種類のドライバーで比較試聴や技術的な測定を行い、
全体の開発プロジェクトは5年以上にも及びました。その結果、従来の電圧アンプを凌駕し、
今までの電流アンプの概念を覆す特許回路を完成させたのです。

既存の電流アンプは、電流フィードバック付き電圧アンプとして、またはフィードバック付き
電流アンプとして確立されていますが、どちらのタイプも、ハイエンド・オーディオのアンプとしては、
負帰還があまりにもスローであることがわかりました。

現在、本国ドイツで特許申請中のiTRON回路は、無帰還のシンメトリー・シングルエンド回路です。
出力は、入力電圧に正確に追従するよう完全にコントロールされた電流出力です。
つまり、厳密にいえば、iTRON回路はアンプというより、非常に洗練された電圧/電流コンバーターであり、
ドライバーのダイヤフラムの動きを直接制御するエンジンなのです。

実験室でのテスト

実験室でのテスト

iTRON回路のずば抜けた優位性は、実験室のモデリング技術を使って電圧アンプと比較した動作を
シミュレートすることで確認できます。以下に示す2つのグラフは、箱型の2ウェイスピーカーを用いて
両方のタイプのシミュレーションを行ったもので、入力電圧(青)、出力電圧(緑)、
出力電流(赤)の曲線は、読み取り易くするために、互いに少しずらして表示しています。

電圧アンプのシミュレーション

iTRON電流アンプのシミュレーション

電圧アンプ(図1)では、入力電圧は、そのままパーフェクトに出力電圧へと増幅されます。
この回路では、実際にダイヤフラムを加速させる電流(赤い曲線)は、
ボイスコイルのインダクタンスによりゆっくりとしか立ち上がらず、
入力電圧に対して遅延が発生していることが分かります。

このように音楽エネルギーの立ち上がりは、減速を余儀なくされ、遅延が発生します。
iTRON電流アンプのシミュレーション(図2)では、出力電圧(緑の曲線)が
入力電圧に追従せず、入力パルスの開始時に急激に(約20V)ピークになるなど、
全く異なる動きをすることが判ります。つまり、電流アンプは瞬間的に最大電圧を発生させることで、
ボイスコイルのインダクタンスに打ち勝ち、遅延なく電流を流し始めるのです。
この時、出力電流よりも先に出力電圧のピークやってくるのですが、入力電圧に対しては
正確なタイミングで出力され、実質的に入力電圧の1対1の完全なコピーであることが分かります。

結論

結論

電流駆動に対応したスピーカーを駆動する場合において、iTRON電流ドライブ回路は動作原理と
測定性能の両面において電圧アンプよりも優れた特性を持っており、ボイスコイルを駆動・制御する
アンプの設計としては革新的かつ正確、そして何よりも電気物理学的に理に適ったコンセプトなのです。

 

iTRONテクノロジーを搭載した製品

iTRONテクノロジーを搭載した製品

TRIO G3
ホーンスピーカー・システム
(フルアクティブ・バージョン)

 

DUO GT
ホーンスピーカー・システム
(フルアクティブ・バージョン)

DUO SD
ホーンスピーカー・システム
(フルアクティブ・バージョン)

UNO SD
ホーンスピーカー・システム
(フルアクティブ・バージョン)